丸谷秀人のブログ

エロゲシナリオライター丸谷秀人の棲息地。お仕事募集中

神聖なる儀式だったりしたらいやだなぁ。

 人間ピラミッドというのがあるそうである。見たことはない。

 運動会などでよくおこなわれているらしい。

 名称からすると、上半身裸になった生徒達が巨大な縄に群がり、縄で繋がれたそりに積まれた巨大な石を引っ張って校庭を一周するのであろう。ピラミッドというからには、石は一個ではなく、複数の石を何段も積み上げるのだろう。一周回って終点につく度に積み上げていくのだろう。

 運動会でやるにはハードな競技であることよ。片付けも大変そうだし。

 くわばらくわばら。

 様々な方面から危険性が指摘されている、と聞いたので、そりから落ちた巨石の下敷きになったりしたらそりゃ危ないと納得と思っていたらどうも違うらしい。

 そりゃそうだ。上半身裸ではいろいろまずいだろう。特に女の子は。

 ではなく。

 聞いたり読んだりしたところによれば、四つん這になった子供達が何段も重なってピラミッド状になることらしい。当然体操服着用である。その際、かなりの体重が下の段の子供にかかるらしいし上に、バランスも崩れやすいらしく、トランプの城の如くぺちゃんこになると、骨折したりする子も多数でるとのこと。

 各自治体で中止とか段数を低くするなどの対策が進行中だという。

 

 でも、いまだ頑としてピラミッドを続けている学校も多くそれどころか段数を上げているところさえあるらしい。なぜそこまでして彼らは続けるのだろう? 私なら面倒そうなものはさっさとやめるところだし、私でなくても面倒そうなものはとりあえずやめておくのが最近のブームだと思っていたのだけど。

 

「なんとか今年も出来ましたな校長。段数も一段とはいえあげられましたしね」

「うむ。練習中重傷者が出た時はダメかと思ったが、山田先生が熱弁を振るい周囲を引っ張り、なんとかしてくれた」

「生徒達に一体感や達成感を味あわせるには、人間ピラミッドは最高。負傷した坂口のためにも成功させなきゃならん、でしたか」

「なかなかよかったよあれは。なんせ彼の情熱と言葉には真実があった」

「あくまで山田先生が信じている真実でにすぎませんがね……本当のことを知ったら彼はどう思いますかね?」

「知らないのが幸せなこともあるのだよ教頭」

「同感ですね。あれが『おでーぼろさま』に捧げる儀式などと知ったら……」

「あの手の人間は知っても信じんよ。ある意味、しあわせな人種さ」

「それにしてもひどい神だ。人間に危険を冒させることで、その信心を測るとは」

「そういうがね教頭。神というのは意地が悪いものなのだよ。聖書を知ってるかね? 信心深い男に、自分の子供を生け贄に捧げよと命じた話を」

「捧げたのですか?」

「捧げようとしたところで止められたのだったかな? おそらく肝心なのは、彼は苦悩したが本気で捧げようとしたことなのだろう。我々が子供達が負傷する可能性を知りつつ、今年も儀式を強行したようにな。行う学校が減った分だけ、段数も増やさざるを得なかったが、そのことも『おでーぼろさま』には汲み取って欲しい物だ」

「校長。もし、全ての学校が人間ピラミッドをやめたら、なにが起こるんでしょうね」

「さぁな……私も恐ろしいことが起こるということを前の校長から引き継いだだけだからな。起こってみないことにはわからんよ。だが、君は体験したいかな?」

「賭をするには相手が危なすぎですな。相手が神ではね」

 

 みたいな会話が行事終了後行われていたのではないだろうか。

 あれは御柱とか同じ宗教儀式なのではないだろうか。なんせピラミッドだし。

 秘密の宗教儀式だとすれば、人間ピラミッドが全国で中止される日が来たとしても、その時には別の危険な儀式が行われるようになるのだろう。

 

 本当に子供でなくてよかった。